求人キャッチコピーとは、掲載情報のもっとも目立つ部分に表示され、自社のビジョンや仕事の魅力をひとことで伝えるキャッチフレーズとなります。求職者はまず求人キャッチコピーを見て、読み進めるか判断するため、求人詳細の閲覧や応募率を左右する重要な要素といえます。とはいえ「効果的な書き方がわからない」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
求人キャッチコピーは、単にメリットばかりを羅列しても、十分な応募が集まらないばかりか、応募者の質に影響を及ぼす可能性もあります。本記事では、求人におけるキャッチコピーの役割や応募率を高める書き方、求める人材からの応募を増やすための具体的な方法までご紹介しますので、ぜひご参考にしてください。
目次
求人キャッチコピーの役割とは
キャッチコピーとは、商品や作品など何らかの告知に用いられる文章で、人の注目を惹きつける役割をもっています。広告の世界では、効果的なキャッチコピーを生み出すコピーライターという専門職が存在しており、魅力的なキャッチコピーは広告の効果を左右する要といっても過言ではありません。
とりわけ現代の求人市場は、無数の求人情報であふれています。当然ながら求職者はすべての情報を見るわけではありません。ここで重要なのがキャッチコピーなのです。
メラビアンの法則によれば「第一印象は3秒で決まる」ともいわれています。人間は1秒間に約5〜10文字を読むことができるため、わずか15〜30文字程度のキャッチコピーで企業や職種の魅力を凝縮し、求職者の関心を惹きつけ、求人情報の詳細へと導く必要があります。
この短い文面で「面白そう」「自分に合っている」「もっと知りたい」という感情を喚起するのがキャッチコピーの役割です。効果的なキャッチコピーは、求職者の目を惹き、企業の魅力を伝え、最終的には応募率の向上に直結します。
効果的な求人キャッチコピー作成の手順
効果的な求人キャッチコピーを作成するためには、以下の4つのステップを踏むことが重要です。これらのステップを通じて、求職者の心に響くメッセージを作り上げましょう。
【ステップ1】ペルソナを明確にする
求人キャッチコピーを作るためには、まず、ペルソナを明確にすることが大切です。ペルソナとは、自社の求人に興味関心を持つ具体的な人物像を指します。ペルソナと似たものに、ターゲットがありますが、両者は似て非なるものですので注意が必要です。
ターゲット | 年齢や性別、仕事観などから自社の採用につながりそうな集団の属性 |
ペルソナ | 自社の求人に興味を持ちそうな求職者像、架空の人物像 |
ペルソナを明確にすることで、その人物の心に響くようなキャッチコピーを作成することができます。ペルソナが不明瞭で、誰に向けたものかわからない求人情報では、応募が集まらなかったり、採用要件を満たさない方の応募が増えたりする可能性があります。
したがって、ペルソナを明確にすることは、効果的なキャッチコピーを作る上で基盤となるプロセスといえるでしょう。
【ステップ2】ペルソナの悩みやニーズを整理する
続いて、設定したペルソナが抱えているであろう悩みやニーズを整理します。この際、ペルソナになりきったつもりで考えましょう。普段の仕事でどんなことに困っているか、どういった不満があるか、将来どうなりたいと考えているか具体的に挙げていきます。
このフェーズでは、キャッチコピーとして使用するかどうかは一旦考えず、とにかくたくさん悩みやニーズを挙げていきます。
<例>
- 休みが少なくて、趣味や恋愛を楽しむ余裕がない。
- 仕事内容が単調で、成長できていない気がして将来が不安。
- 先輩は仕事の愚痴や不満ばかりで、尊敬できない。
もし、イメージがわかなければ、募集する部門の従業員にインタビューをすることで解像度が高くなります。とくに経営者や人事担当者が求人原稿を作成する場合は、自身の価値観と現場の価値観にズレが生じていることも多いため、現場の声を聞くことは非常に大切です。
なお、ペルソナの作り方についてはこちらのコラムをご参考にしてください。
採用ペルソナの作り方|求人を書く前にまずやることとは?【ステップ3】自社の強みや求人の魅力を整理する
次に、自社の強みや募集するポジションの魅力を明確にします。自社ならではの魅力や、他社との差別化のポイントを整理し、それらがペルソナに対してどういった価値をもたらすかを考えます。
たとえば、社割制度や有給・産休・育休取得率100%といった、競合他社にはないサービス内容や実績、社員食堂完備などの職場環境の特徴をアピールすることで、求職者の興味を惹くことができます。
福利厚生の書き方についてはこちらのコラムでご紹介していますので、あわせてご参考にしてください。
【求人の書き方】応募したくなる「福利厚生」とは?【ステップ4】コピーライティングで複数パターン書く
ペルソナの悩みやニーズを整理したものと、自社の特徴・強みを整理したものを見比べながら、共感の接点を探ります。その際、単に自社の強みや特徴を羅列するだけでは思うような効果は得られません。ペルソナの心に訴えかけるように文章を変換することが、効果の高いキャッチコピーの条件となります。
キャッチコピーはひとつではなく複数パターン用意することをおすすめします。数をこなすことで、より洗練されたキャッチコピーになるほか、いくつかのパターンを試すことで、キャッチコピーによる効果検証ができるため、自社での求人作成のノウハウが溜まっていきます。
マッチングを高める求人キャッチコピーの書き方
求人キャッチコピーは、いくつかのテクニックを覚えておくことで、自社の魅力がより相手に伝わりやすくなり、応募率を高めることが可能です。キャッチコピーには文字数制限はありませんが、前述のとおり人が一度に知覚できる文字数は限られているため、短い文章で切れ味よく書くことが大切です。ここでは求人キャッチコピーの書き方を例文をふまえてご紹介します。
ベネフィットを示す
求人広告のキャッチコピーでは、ベネフィットを示すことが重要です。ベネフィットと混同されがちなものとしてメリットがあります。メリットは仕事内容や募集条件の特徴や効果を指しますが、ベネフィットはメリットによって得られる具体的な利益や体験を指します。
ベネフィットは設定したペルソナが具体的にイメージできるものにすることで、高い効果を発揮します。たとえば、メリットとベネフィットの違いを表すと次のようになります。
メリット | リモートワーク制度あり |
ベネフィット | リモートワーク制度により、通勤のストレスから解放され、有意義な時間を過ごせます、就業後は趣味を満喫できます。 |
ベネフィットを明確に示すことによって、求職者はそこで働いて得られる利益を理解し、応募への動機付けが強まります。
<例文>
- 【充実の福利厚生】カフェテリアプランで自分にあったサポートが選べます
- オープニングスタッフ募集! フラットな人間関係で、自分たちでルールを決められます!
数字や実績を入れる
数字や実績をキャッチコピーに含めることは応募率アップにつながります。具体的な数字や実績は、抽象的な表現に比べて自社の強みが伝わりやすくなり、信頼性も高まります。
たとえば、営業職の募集であれば、「90%が営業未経験」「3年以内離職率0%」のように、具体的な数字を用いることで、企業の特徴や職場環境のよさを伝えることができます。数字や実績を用いることで、キャッチコピーに説得力を持たせ、応募者の信頼を得ることが可能です。
<例文>
- 【研修充実】90%以上が営業未経験からのスタートだから安心
- 定着率の高さが自慢! 在籍社員の6割が10年以上のベテランです!
曖昧な言葉は使わない
キャッチコピーを書く際は、曖昧な表現を避け、明確かつ具体的な言葉を選ぶことが重要です。曖昧な言葉は求職者に不明確な印象を与え、興味を抱きにくくなります。
「アットホームな職場です」と書くよりも「20〜40代が中心の職場でなんでも相談しやすい環境です」といった方が、風通しのよさが伝わるでしょう。明確で具体的な表現を用いることで、他社との差別化につながり、興味関心を惹くことができます。
<例文>
- 日払い可|頑張った分は反映される給料システムです
- 【OJT制度あり】実践を通して知識やスキルが身につきます
心理学を活用する
心理学の原理を活用することで、求人キャッチコピーの効果を高めることができます。近年では、デジタルマーケティングが注目されていることで、行動経済学や心理学を学ぶ方も増えています。
人間の心理的傾向を理解し、それに基づいたメッセージを構築することで、求職者の注目を惹き、行動を促すことが可能です。キャッチコピー作成に有効な心理学テクニックの例としては次のようなものがあります。
◆カリギュラ効果
物事を禁止されると逆にやりたくなる心理現象
<例文>
- 閲覧禁止! 職場を知るとココで働きたくなります
◆ハロー効果
物や人を評価する際、目立つ特徴によって全体を印象付けられること
<例文>
- ◯◯分野で世界トップシェアを誇る会社です
◆スノップ効果
簡単に入手できない物は需要が高まり、誰でも簡単に入手できるものは需要が減少するという消費現象
<例文>
- 新規部門設立のため、スターティングメンバーを2名募集
◆ツァイガルニック効果
完了した事柄よりも、未完了の事柄のほうが記憶に残るという心理的効果
<例文>
- 口下手の私が3か月で営業表彰を受けた理由とは…
意外性を盛り込む
少し難易度は高くなりますが、意外性のある表現を取り入れることも、有用なコピーライティングテクニックのひとつです。意外性は求職者の興味関心を惹き引き、記憶に残りやすくなります。
例えば、「当社のトップ営業は口下手でした!」「新卒が部長に仕事(スマホ操作)を教えています!」のように、多くの人が思い込んでいるようなイメージをいい意味で裏切るような表現を用いることで強い印象を与えることができます。
求職者が思わず「え、どういうこと?」といった感情を抱くことで、求人情報広告の詳細まで見てもらえるようになり、結果として自社の風土にあった人材とのマッチングにつながるでしょう。
<例文>
- 福利厚生や勤務時間を気にする方は、おすすめしません!
- 高卒で年収1000万円も夢じゃない! ちなみに社長は中卒です
なお、応募したくなる求人の書き方についてはこちらのコラムでご紹介していますので、あわせてご参考にしてください。
応募したくなる求人の書き方とは? 魅力的な文章や広告をつくる5つのコツ避けるべき求人キャッチコピーの特徴とは
求人キャッチコピーは、企業の魅力を伝え、理想とする人材を惹き寄せる重要な役割を担います。近年、採用難易度の高まりにより、数多くの求人情報が掲載されているなかで、求職者から目に留めてもらうためには求人キャッチコピーの創意工夫が欠かせません。
なかでも、応募率が上がらないとされるキャッチコピーには共通の特徴があります。これらの特徴を理解し、使用を避けることで、より効果的なキャッチコピーを作ることが可能です。ここでは、多くの企業がやってしまいがちな、避けるべき求人キャッチコピーの特徴をみていきましょう。
誰に向けて書いているかわかりづらい
キャッチコピーが誰に向けて書かれているのかが不明確であることは、効果を低下させる大きな要因です。なぜなら、ターゲットやペルソナが不明確なキャッチコピーは、求職者に共感や関心を持ってもらいにくくなるためです。
「やる気のある人歓迎」のように抽象的で誰にでも当てはまる表現ではなく「体育会系出身者が8割! 部活のようなエネルギーあふれる職場です」といった具体的な表現を提供することで、特定の層に共感してもらいやすくなります。
奇をてらい過ぎている
キャッチコピーに奇抜さを求めすぎると、逆効果になる場合があります。奇抜な表現は注目を集めるかもしれませんが、かえって内容が不明瞭になったり、不適切な印象を与えたりするリスクがあります。
「宇宙一幸せな職場を創ろう!」のような大げさな表現や、インパクトを持たせようと奇をてらった表現が応募や採用につながるとは限りません。それよりも、実際の職場の魅力や働く環境を具体的に伝えることが、求職者にとって価値ある情報となるでしょう。
独自性がない
他社との差別化がないキャッチコピーでは、企業の特色や魅力を十分に伝えることができません。社名を隠せば、どの企業にも当てはまるようなキャッチコピーは避けるべきです。
「社員の成長を応援する職場です」ではなく「独自のメンターシステムと人事評価システムで社員の成長をサポートしています」といった、自社ならではの特徴を強調する表現が必要です。他社との差別化を図り、自社の独自性を前面に出すことで、求職者にとって魅力的な企業として印象付けることができます。
検索キーワードばかり意識している
キャッチコピー内に検索キーワードを過度に意識すると、人間味のない印象を与える可能性があるため、使い方には注意が必要です。近年では、Indeedや求人ボックスのような求人検索エンジンが注目されており、少しでも検索にヒットさせようと、キャッチコピーにキーワードを詰め込むケースがみられます。
もちろん、求人キャッチコピーに適切なキーワードを含めることで検索結果に好影響をもたらすことも事実です。しかしながら、最終的に求人に応募するのを決めるのは人間であるため、闇雲にキーワードばかり羅列しても効果は得られません。したがって、検索キーワードを意識しつつも、求職者の感情に訴えかける表現を取り入れることが重要です。
怪しい求人情報に見える
過度に誇張されたり、不明瞭な表現が含まれているキャッチコピーは、怪しい印象を与えてしまうことがあります。とりわけ情報の信頼性や透明性が求められる現代において、求人キャチコピーの不適切な表現は求職者の信頼を損ねる原因となり得るでしょう。
「誰でも簡単に高収入!」「頑張り次第で月収100万円」のような非現実的な表現ではなく、「実績に応じた公正な評価制度で、一人ひとりの能力をしっかりと評価します」といった、信頼性のある文言が必要です。信頼性と透明性を持った文章を用いることで、求職者に安心感を与え、真剣に検討してもらうきっかけを作ることができます。
まとめ|効果的な求人キャッチコピーが、採用成功のカギ!
本記事では、効果的な求人キャッチコピーの書き方を解説しました。キャッチコピーは、企業の魅力を伝え、理想の人材を惹き寄せるための重要な役割を持ちます。
求人キャッチコピーを作成するためには、明確なペルソナの設定から始め、そのペルソナのニーズと自社の強みを整理し、もっとも効果的な表現でまとめる必要があります。また、表現方法としては、心理学的アプローチをはじめとしたテクニックも知っておくことで、あらゆる切り口で求職者にアプローチできるようになるでしょう。
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