求人広告を作成する際、応募者にとって魅力的な内容を記載することが欠かせません。そのなかでも、福利厚生は、応募者がその企業への応募を決定する大きな要因となります。福利厚生は従業員の働きやすさや生活の質を向上させるものであり、充実度合いによって企業の魅力を高める重要な項目です。
一方、「うちの会社には、大手企業に比べて魅力的な福利厚生がない……」とお悩みの方も多いでしょう。本記事では、福利厚生の重要性とその具体的な書き方について解説します。適切に福利厚生を記載することで、優秀な人材を惹きつけましょう。
目次
福利厚生とは? 福利厚生を明記する意味
福利厚生とは、従業員の働きやすさや生活の質の向上を目的とした、給与以外の各種支援やサービスを指します。求人のなかに福利厚生を明記することは、企業の魅力を伝える重要な手段であり、応募者に対して働く環境や支援体制の充実度をアピールします。
多彩な福利厚生を用意することで、応募者は企業が従業員を大切にしている姿勢を理解し、応募意欲が高まるでしょう。福利厚生には大きくわけて「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があり、それぞれ内容が異なります。
法定福利厚生とは、法律にもとづいて企業が従業員に提供しなければならない福利厚生です。これには、社会保険、労働保険、年金制度などがあり、従業員が安心して働くための基本的な支援となります。
一方、法定外福利厚生とは、企業が自主的に提供する福利厚生で、従業員の満足度を高めるためのさまざまな支援やサービスが含まれます。
概要 | 主な福利厚生 | |
---|---|---|
法定福利厚生 | 従業員への提供が法律で義務付けられている福利厚生 | ・労災保険 ・雇用保険 ・健康保険 ・介護保険 ・厚生年金 ・子ども/子育て拠出金 |
法定外福利厚生 | 企業が自主的に提供する福利厚生 | ・資格手当/資格取得支援 ・家族手当 ・社員割引 ・住宅手当/社員寮 ・提携施設利用 ・退職金/財形貯蓄/確定拠出年金など |
法定外福利厚生の種類にはどんなものがあるか?
法定外福利厚生は、企業が自主的に提供する支援やサービスです。これは従業員の生活の質を向上させ、働きやすい環境を作り出すために重要な役割を果たします。
法定外福利厚生の種類は多種多様ですが、大きく7つのカテゴリにわけられます。以下の表では、各カテゴリ別に具体的な福利厚生内容をまとめました。
カテゴリ | 概要 | 具体的な福利厚生内容 |
---|---|---|
住宅関連 | 従業員の住居に関する支援を行う福利厚生 | 社宅提供、住宅手当、引越し費用補助 |
健康増進・疾病予防 | 従業員の健康を維持・向上させるための支援 | 健康診断の補助、フィットネスクラブ利用補助、予防接種の補助 |
育児・介護支援 | 育児や介護をサポートするための福利厚生 | 育児休業制度、介護休業制度、育児・介護施設利用補助 |
慶弔・災害関連の福利厚生 | 慶事や弔事、災害時の支援を行う福利厚生 | 結婚祝金、出産祝金、弔慰金、災害見舞金 |
余暇・レクリエーション | 従業員の余暇活動やレクリエーションを支援する福利厚生 | 社員旅行、レジャー施設利用補助、サークル活動支援 |
自己啓発・キャリア開発 | 従業員のスキルアップやキャリア開発を支援する福利厚生 | 資格取得支援、研修費用補助、語学学習支援 |
資産形成 | 従業員の将来の資産形成を支援する福利厚生 | 退職金制度、財形貯蓄制度、株式購入制度 |
福利厚生を求人に書く際の注意点
福利厚生を求人情報に記載する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらのポイントを押さえることで、応募者に対して正確かつ魅力的な情報を提供できます。とくに注意すべき点をふたつ解説します。
対象や条件がある場合は必ず明記する
福利厚生には、特定の条件や対象者にのみ適用されるものがあります。この場合、条件や対象を明確に記載することが重要です。なぜなら、求職者は実際にその福利厚生を利用できるかどうかを確認し、応募を判断する材料となるためです。
たとえば、育児支援制度が特定の勤務年数以上の従業員にのみ適用される場合、その条件を求人に明記しないと求職者に誤解を与える可能性があります。また、求職者が後から条件を知った場合、企業に対する信頼感が損なわれる恐れもあります。
したがって、福利厚生の内容を記載する際には、適用条件についても記載することが大切です。
一律支給以外は給与に含めない
福利厚生のなかには、手当として従業員全員へ一律に支給されるものと、特定の条件を満たした場合にのみ支給されるものがあります。一律に支給される福利厚生は給与の一部として考えることができますが、条件付きの福利厚生を給与に含めてはいけません。
条件付きの福利厚生は、すべての従業員が必ずしも受け取れるものではないため、これを給与に含めると実際の給与額が不明確になり、求職者に誤解を与える可能性があります。たとえば、業績連動型のボーナスや特定の業績目標を達成した場合にのみ支給されるインセンティブは、確定的な収入とはいえません。
したがって、求人情報には一律支給の福利厚生と条件付きの福利厚生を明確にわけて記載し、求職者に対して正確な情報を提供することが重要です。
福利厚生で自社の魅力を伝えるポイント
福利厚生を効果的に記載することで、企業の魅力を求職者に伝えることができます。適切な福利厚生の記載は、求職者に対して企業のサポート体制や働きやすさをアピールする重要な手段です。自社の魅力を最大限に伝えるためのポイントを解説します。
福利厚生はできる限り多く記載する
福利厚生は企業の魅力を示す大きな要素です。求職者に対して多くの福利厚生を提示することで、企業が従業員を大切にする姿勢をアピールできます。たとえば、オフィスに電子レンジがある、専用ロッカーが利用できるといった細かな点も、求職者にとっては重要な情報となります。
福利厚生を充実させることで、企業が多岐にわたる支援を提供していることを示し、求職者に安心感と魅力を感じてもらえるでしょう。
内容を具体的に書く
福利厚生の内容を具体的に記載することも重要です。具体的な数字や事例を挙げることで、より実態にもとづいた情報を提供できます。たとえば、「賞与年2回 ※前年実績として3か月分の支給あり」「バースデー休暇あり ※家族の誕生日にも利用できます」といったイメージです。
このように、福利厚生を具体的に書くことで、求職者に対する企業の魅力を一層高めることができます。
ユニークな福利厚生を導入する
他社と差別化を図るためには、ユニークな福利厚生を導入することが効果的です。一般的な福利厚生に加えて、独自の福利厚生を提供することで、より自社の魅力をアピールできるでしょう。
たとえば、ペット同伴出勤制度あり、社内保育施設あり、提携トレーニングジム利用可など、自社ならではのユニークな福利厚生を検討します。ユニークな福利厚生は企業の文化や価値観を反映するものであり、企業の独自性をアピールすることが可能です。
【例文あり】福利厚生の書き方を職種別にご紹介
福利厚生の充実は、企業の魅力をアピールする手段です。また、求人掲載をする際は、募集職種ごとに書き方を工夫することで、より応募者の興味関心を惹きつけることができます。ここでは、福利厚生の書き方を例文つきで解説します。
営業職を募集する場合の例文
営業職は成果にもとづく評価が重要視されるため、業績連動型のインセンティブや各種支援制度が魅力となります。
<例文>
当社では、営業職のスタッフが安心して働ける環境を用意しています。また、業績達成時には報酬で還元する仕組みを整えています。
- リモートワーク手当(月1万円)
- 提携サテライトオフィス利用可
- インセンティブ制度(毎月の業績に応じて報酬支給※成約額の最大◯◯%還元)
- 社内研修制度(営業スキル向上のための各種研修制度あり)
事務職を募集する場合の例文
事務職では、働きやすい環境と安定したサポートが重視されます。具体的な福利厚生の例は次のとおりです。
<例文>
事務職のスタッフがオフィスで働きやすい職場環境を提供しています。また、育児中の方でも安心して働ける制度をご用意しています。
- 産休・育児休業制度あり(入社1年以上)
- リモートワーク制度あり(入社半年以上)
- 時短勤務制度
- 育児ママ・パパ交流会制度
システムエンジニアを募集する場合の例文
システムエンジニアは専門性が高く、スキルアップの機会が重要です。具体的な福利厚生の内容は次のとおりです。
<例文>
システムエンジニアとして活躍するために、常に最新技術に触れられる環境を提供しています。また、効率的かつ快適に業務に臨むための制度も用意しています。
- 資格取得支援制度(関連資格の受験費用全額補助)
- 最新技術に関する社内勉強会あり
- パソコン周辺機器の購入補助(マウス、キーボードなど)
福利厚生を導入するメリット・デメリット
福利厚生を導入することで、どのようなメリットが得られるのかイメージが湧かない方も多いでしょう。また、福利厚生はメリットばかりではなく、デメリットも存在します。
両面を理解したうえで、適切に導入することで最適な福利厚生制度を整えることができます。ここでは、福利厚生を導入するメリット・デメリットを解説します。
メリット
福利厚生の導入は、企業と従業員の双方にとって多くのメリットがあります。具体的なメリットについて解説します。
従業員満足度の向上
福利厚生を充実させることで、従業員の満足度が向上します。満足度の高い従業員は、モチベーションが高く、生産性も向上します。
たとえば、フィットネスジムの利用補助や予防接種などの健康関連の福利厚生は、従業員の健康維持に役立ちます。従業員が企業からのサポートを感じることで、企業へのロイヤリティも高まり、結果として従業員満足度が向上します。
離職率の低下による採用コストの削減
充実した福利厚生は、従業員の離職率を低下させる効果があります。福利厚生が充実している企業は、従業員が長く勤めたいと感じるため、離職率が低くなります。
たとえば、育児支援や介護支援などの福利厚生は、ライフステージに合わせたサポートが受けられるため、従業員が安心して働き続けることができます。また離職率が低下することで、採用コストや研修コストの削減にもつながるでしょう。
ブランドイメージや採用力の向上
充実した福利厚生は、企業のブランドイメージを向上させる要素のひとつです。福利厚生が整っている企業は、働きやすい職場環境を提供していると認識され、求職者からの関心が高まります。これにより、優秀な人材を惹きつけることができ、採用力が向上します。
たとえば、D2Cペット事業を手がける株式会社バイオフィリアでは愛犬・愛猫との同伴出社を認めています。こうした福利厚生は、企業文化の一部として認識され、ブランドイメージの向上に寄与します。
参考:株式会社バイオフィリア公式note|【愛犬家必見!】愛犬と同伴出社できるオフィスに引っ越しました!
デメリット
福利厚生には数あるメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。主なデメリットについて解説します。
コストが発生する
福利厚生を導入するには、当然ながらコストが発生します。とくに、法定外福利厚生は企業の自主的な取り組みであり、その分の費用が企業にとっての負担となります。
たとえば、受診項目が手厚い健康診断や、育児支援のための施設利用補助などには費用が発生します。このコストをどのように捻出するかが、企業にとっての課題となるでしょう。
従業員ニーズと合わない可能性がある
福利厚生が従業員のニーズに合わない場合、その効果が十分に発揮されない可能性があります。企業が導入した福利厚生が、従業員にとって魅力的でなければ、満足度やモチベーションの向上には繋がりません。
たとえば、特定の年齢層や家族構成に偏った福利厚生は、すべての従業員にとって有益とは限りません。仮に以前からある福利厚生でも、現代のニーズにあわなくなっている可能性もあります。
既存の従業員が求めているニーズを把握し、それに対応した福利厚生を提供することが重要です。
途中で廃止すると不満が発生しやすくなる
福利厚生制度が途中で変更されたり廃止されたりすると、従業員に不満が発生しやすくなります。とくに、従業員が期待していた福利厚生がなくなる場合、その影響は大きいです。
たとえば、長期間続いていた育児支援制度が急に廃止されると、子育て中の従業員にとって大きな負担となります。「うちの会社は業績が危ういのではないか……」と不安を抱かせるリスクもあるでしょう。
このような状況を避けるためにも、福利厚生の導入前に綿密な計画を立て、持続可能な制度を設計することが求められます。
福利厚生を導入する方法・導入した後に注意すべき点
福利厚生を効果的に導入するためには、計画的かつ戦略的なアプローチが必要です。ここでは、福利厚生の導入方法や、導入後に注意すべき点について具体的に解説します。
導入する方法
導入目的や期待する成果を明確にする
福利厚生を導入する際には、まずその目的や期待する成果を明確にすることが重要です。明確な目的があることで、福利厚生の導入がより効果的に進められます。
たとえば、従業員の健康維持を目的とする場合、健康診断やフィットネスプログラムの導入が考えられます。このように、導入目的を明確にすることで、具体的な施策を立てやすくなり、期待する成果を得やすくなります。
従業員にアンケートを取る
福利厚生を導入する前に、従業員にアンケートを取ることは有効です。従業員のニーズや希望を把握することで、実際に利用される福利厚生を提供することができます。
たとえば、育児支援やリモートワークの需要が高いことが分かれば、それに応じた福利厚生を導入することで、従業員満足度の向上が期待できるでしょう。ただし、何でもかんでも従業員の意見を取り入れるのではなく、その理由や背景に組織としてどのような課題があるかを分析することが大切です。
また、どのような福利厚生を導入すべきか迷う場合は、「福利厚生サービス」の利用もおすすめです。福利厚生サービスとは、外部の福利厚生サービス会社が提供するパッケージプランのことで、企業のニーズに合わせたカスタマイズが可能です。
導入した後に注意すべき点
利用方法のマニュアル作成し、従業員に伝える
福利厚生を効果的に利用してもらうためには、導入後にその利用方法を従業員にしっかりと伝えることが重要です。具体的な利用方法や手続きをまとめたマニュアルを作成し、従業員に周知することで、福利厚生の利用率を高めることができます。
たとえば、健康診断の申込み方法や育児休業の手続きについて詳細に説明するマニュアルを配布することで、従業員は安心して福利厚生を利用することができます。
定期的に利用状況を見直す
福利厚生の導入後は、その利用状況を定期的に見直すことが重要です。利用率や従業員の満足度をチェックし、必要に応じて改善や変更を行うことで、福利厚生の効果を持続できます。
たとえば、定期的に従業員アンケートを実施し、フィードバックを収集することで、現行の福利厚生が適切に機能しているかを確認できます。このように、定期的な見直しを行うことで、福利厚生の質を維持し、従業員の満足度が高まります。
まとめ:充実した福利厚生は採用力や従業員満足度の向上につながる
福利厚生は従業員の働きやすさや生活の質を向上させ、企業の魅力を伝える重要な要素です。法定外福利厚生を充実させることで、応募者に対するアピールポイントとなり、従業員満足度や離職率の低下にも寄与します。
記載時には、対象や条件を明確にし、具体的な情報を提供することが重要です。また、ユニークな福利厚生を導入し、他社との差別化を図りましょう。もし、どのような福利厚生を導入すべきか迷う場合や、効果的な書き方がわからない場合は、外部の専門家に相談することをおすすめします。
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