いざ、求人を作成しようとしても、「給与の書き方はあっているのか?」「求職者に自社の魅力は伝わっているのか? 」と、不安や疑問が湧いてきて、納得のいく求人を書き上げられない……。今回はそんな方に向けて、求人の書き方について解説します。
魅力的な求人を作成するには、まず、求める人材にあわせて必須項目を埋めていくところからはじめます。必須項目は労働基準法に基づいて明記する必要があるため、記載してはいけない表現や、ポイントがいくつか存在します。記載例もあわせてご紹介しますので、これから求人を作成する方や、すでに掲載している求人の見直しに、ぜひ、本記事をお役立てください。
求人に項目すべき必須項目とは?
求人募集をする際は、必ず明記しなければならない項目があります。職業安定法によって定められた労働条件11項目で、求人を作成・公開する際は明示することが義務付けられています。まずは、それら11項目について解説していきます。
項目1:業務内容
業務内容とは、求職者が就職後にどのような業務を担当することになるのかを記載する項目です。
基本的な職種(営業職、人事職、開発職など)を記載し、さらに細かくどのような業務内容なのかを明記します。たとえば、営業職であれば、担当領域や取り扱う商材についてはもちろんのこと、実際の仕事内容がイメージできるよう、必ずこなす必要のある日課や主たる業務のほかに付随する業務などについても、できる限り具体的に書くことがポイントです。
求職者が求人を見る際に、重要視しているのが業務内容です。自分が担当することになる業務内容はもちろんのこと、職場環境によっても生活スタイルやキャリアプランが左右されるため、主な判断軸となります。そのため、企業は求人を作成するにあたり、業務内容をいかに充実させるか、求職者が安心して応募できる内容か、を意識することが重要です。
項目2:雇用形態・契約期間
契約期間とは、求職者を雇用する期間のことで、無期雇用なのか有期雇用なのかを明記する必要があります。雇用形態を明記することに加えて、募集している職種が有期雇用であるパートタイマーや契約社員などの場合には、契約期間と更新の可否などを記載する必要があります。
雇用形態や契約期間について、企業と求職者の間で認識にズレがあると、トラブルに発展する可能性があるので、記載の漏れがないよう十分注意しましょう。
項目3:試用期間
試用期間とは、企業が人材を採用する際に、社員としての適性があるかを判断するために設けられています。期間の長さに明確な定めはありませんが、1〜6か月が平均的で最長でも1年程度といったケースが多くなっています。試用期間が終了した後、企業と労働者の合意のうえで本採用されるのが一般的です。
試用期間を導入する場合は、求人への記載のほか、就業規則や労働契約書へも試用期間について明記することが定められています。また、試用期間において、給与や就業場所などが本採用の条件と異なる場合は、その内容もあわせて記載する必要があります。
項目4:勤務地(就業場所)
求人における勤務地(就業場所)とは、求職者が採用された際に実際に働く場所のことを指します。本社の所在地と就業場所が異なる場合は、実際に働く場所を明記します。
就業場所は番地まで記載することが基本です。丁寧に記載することで、自宅の近くで働きたい、特定のエリアで働きたいといった求職者に検索されやすくなります。
また、入社後に転勤の可能性がある場合や、就業場所が研修後や試用期間後に決定する場合は、その旨を記載する必要があります。
項目5:勤務時間(就業時間・休憩時間・時間外労働)
勤務時間の項目には、就業時間・休憩時間・時間外労働の3つを記載する必要があります。
就業時間は、1日に8時間・1週間に40時間を超えて労働することは原則として禁じられています。そのため、実働8時間以内で、残業を含めない定時の勤務時間を記載し、始業時間と終業時間を明記しましょう。
シフト制で就業時間が選択できる場合は、働き方のパターン例などを記載すると、求職者がイメージしやすくなります。
また、休憩時間については、労務時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上が義務づけられています。
時間外労働(残業代)は、原則1日に8時間・1週間に40時間を超えた労働時間に支払う賃金となります。企業として時間外労働が平均何時間なのかが記載されていると、求職者にとってひとつの判断材料になります。
項目6:休日
求人における休日とは、今回募集している職種の求職者に適応される休日を指します。就業規則や社内規定で定めている休日と異なる場合は、実態に沿って表記します。
注意すべきは、休日の表記(表参照)です。たとえば、週休2日制と完全週休2日制の違いを理解していない求職者も多いため、年間休日日数とあわせて表記するとわかりやすくなります。
夏休み、年末年始、有給休暇などのほかに、休日出勤がある場合はその旨についても明記しておくとよいでしょう。
休日の表記
週休制 | ・毎週休みが1日ある場合 |
完全週休2日制 | ・毎週休みが必ず2日ある場合 |
週休2日制 | ・月に1回以上、週2日の休みがある場合(ほかの週は1日の休みがある) |
週休3日制 | ・月に1回以上、週3日の休みがある場合(ほかの週は2日の休みがある) |
3勤3休制 | ・3日働いて3日休みがある場合 |
年間休日日数 | ・企業が独自に定める法定外休日を含んだ1年間の合計休日日数 |
休日や勤務時間のより詳細な書き方については、こちらのコラムをご参考にしてください。
【例文つき】休日・勤務時間の効果的な求人の書き方項目7:給与(賃金)
給与(賃金)の基本的な考え方としては、時間外労働や各種手当は含めず、最低限必ず支払われる額を記載します。月給制の場合は基本給の額となりますが、月給の幅がある場合は、下限金額と上限金額を記載するとよいでしょう。また、試用期間中は賃金が異なる場合には、その旨を明記し、実際の給料を書く必要があります。
交通費や住宅手当、家族手当など、条件により別途支給される手当については、給与額とは別で記載します。
固定残業代など、時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度を採用している場合は、以下のような記載が必要です。
【例】 ・月給25万円に固定残業代(38,000円、20時間分)が含まれている場合 月給25万円以上 ※固定残業代(38,000円、20時間分)含む。20時間超過分は別途支給 |
給与の正しい書き方については、こちらのコラムでより詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
求人の給与の正しい書き方と注意点を解説! 応募者を増やすコツもご紹介なお、最低賃金を満たさない給与で求人を募集することはできません。最低賃金についてはこちらのコラムで解説していますので、あわせてご確認ください。
2023年10月〜最低賃金はいくらになる? 全国一覧と採用時の対策・注意点項目8:加入保険
加入保険の項目は、企業の社会保険の適応状況ではなく、今回募集している職種の求職者に適応される保険を記載します。
フルタイムで採用する場合は、健康保険・介護保険(40歳以上)・厚生年金保険・雇用保険・労災保険への加入が必須となります。パートタイマーで採用する場合でも、条件が合えばこれらの社会保険への加入が義務づけられています。
また、採用した求職者が加入対象となる場合は、見習や試用期間であっても、入社初日から被保険者とする義務があります。
項目9:募集者の名称または氏名
募集者の名称または氏名の項目へは、誰が募集をかけているのかを記載します。一般的には、企業や法人の名称を記載します。
項目10:派遣労働者として雇用する場合
派遣労働者として採用する場合には、雇用形態に「派遣労働者」と記載する必要があります。
項目11:受動喫煙防止措置の状況
屋内での喫煙が可能であるか、または、喫煙室の有無などを明記することが必要です。
労働条件の書き方例
実際どのように記載すればよいか、基本的な書き方の一例としてご紹介します。
項目 | 記載例 |
---|---|
業務内容 | 雇入れ直後/営業職 変更の範囲/営業企画・制作 |
雇用形態・契約期間 | 雇用形態/アルバイト期間の定めあり 契約の更新:有 更新上限:有/通算契約期間3年まで |
試用期間 | 試用期間あり 6か月 |
勤務地(就業場所) | 雇入れ直後/大阪支店 変更の範囲/全国の支店・営業所 |
勤務時間(就業時間・休憩時間・時間外労働) | 9:00~18:00 休憩12:00〜13:00(時間外労働あり 月平均15時間) |
休日 | 土日・祝日年末年始・有給休暇・慶弔休暇・産休育休など |
給与(賃金) | 月給25万円 ただし試用期間中は月給22万円 |
加入保険 | 雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険 |
募集者の名称または氏名 | 株式会社◯◯◯ |
派遣労働者として雇用する場合 | 雇用形態:派遣労働者 |
受動喫煙防止措置の状況 | 屋内の受動喫煙対策あり(喫煙室有り) |
応募率をあげる書き方のコツ
冒頭でもお伝えしたとおり、魅力的な求人を作成するには、まず、自社が求める人物像を設定してその人に向けた内容を書き進めることが重要です。求職者は応募先を選ぶにあたって、不安を抱えているため、自分が求職者だったらどんなことが知りたいか、何をどこまで明記されていたら安心できるかといったことを意識して、できるだけ詳しい情報を掲載するとよいでしょう。
ここでは、求職者が重要視する3つの項目、業務内容・勤務時間・給与について、応募率をあげる書き方のコツをお伝えします。ぜひ、ご参考にしてください。
業務内容の書き方
業務内容を書く際は、基本として誰にでもわかる簡単な言葉を使うようにしましょう。とくに、未経験者や新卒者を対象としている場合、業界用語や専門用語を使うと、理解しずらく応募をさけられてしまう傾向にあります。そのため、業界への知識がない人が読んでもわかりやすい文章を心がけることが大切です。
また、求職者の目線になって知りたいであろう情報を具体的に記載することも重要です。たとえば接客業であれば、売上のノルマはあるのか、在庫管理や電話の対応も含まれるのか、髪型や服装など容姿に関する規制はあるのかなど、さまざまな情報を提供することで、仕事内容を具体的にイメージできるようになります。
そのうえで、求職者は「これなら自分にもできそう」「自分には向いていないかもしれない」と、その業務に対する適正を判断できるため、採用ミスマッチの防止にもつながります。
仕事の面白さや、やりがいなど自社の魅力についても、業務内容の項目でアピールしましょう。たとえば「自分らしい接客を心がけることで、顧客との信頼ができ新しいお客様を紹介してもらえた!」「自分が提案したデザインがお客様の成果に! 難しいけれど楽しい仕事です」など、実際に働いている社員の声を紹介することで、仕事を通じて成長できる点を伝えることができます。
自社ならではの強みと、求職者が自分もやってみたいと思えるような要素を盛り込み、他社との差別化を意識できるとよいでしょう。
勤務時間(就業時間・休憩時間・時間外労働)の書き方
勤務時間(就業時間・休憩時間・時間外労働)の基本的な書き方は前述のとおりですが、より具体的に求職者に伝わる書き方のひとつが、1日の就業時間の流れを提示することです。ある程度、日々の業務が決まっている職種の場合は、その日の流れを記載すると、その会社で働くイメージを持ってもらいやすくなります。
【例】 8:45〜9:00 朝礼 9:00〜11:00 メールチェック・お客様対応・発送作業 11:00〜 店頭にて接客・在庫管理 13:00〜14:00 休憩 14:00〜18:00 店頭にて接客・メールチェック・発注作業・業務報告・翌日の準備 |
時間外労働(残業)については、面接では聞きづらいケースもあるので、具体的に明示しておくと親切です。時間外労働削減の取り組みや、企業全体としての時間外労働平均時間などを記載すると想像しやすいでしょう。
【例】 ・残業ほぼなし ・残業は月平均15時間程度 ・繁忙期(1月~3月)は月20時間程度、それ以外はほぼ残業なし |
給与(賃金)の書き方
給与(賃金)の項目では、単に金額を記載するだけでなく、求職者にとってメリットとなる事柄をいかに魅力的に表記するかが重要です。たとえば、「昇給は年1回、賞与は夏と冬の年2回(昨年度実績:月給2か月分)」など、昇給や賞与の回数・金額の提示は、求職者の応募へのモチベーションを高める要素となります。
賞与や昇給の書き方については、こちらのコラムで解説していますので、あわせてご確認ください。
【例文あり】求人の賞与や昇給の正しい書き方とは? 魅力的な伝え方を詳しく解説また、月収や年収のモデルケースを具体的に示すことで、リアルな収入をイメージすることができます。
【例】 ・入社1年目の平均月収/25万円 ・入社3年目の平均月収/30万円 ・新卒入社3年目・25歳・役職なし/年収400万~450万円 ・中途入社5年目・35歳・役職あり/年収650万〜800万円 |
今回ご紹介した内容のほかにも、応募したくなる求人の書き方についてこちらのコラムでご紹介しています。あわせてご参考にしてください。
応募したくなる求人の書き方とは? 魅力的な文章や広告をつくる5つのコツまとめ:求職者の目線になって、具体的でわかりやすい求人の作成を意識することが大事
ここまでお伝えしたとおり、求人を作成する際は、設定したペルソナになった気持ちで、「ここで働いてみたい!」と思わせる内容にすることがポイントです。そのうえで、自社ならではの特長や魅力を盛り込み、他社との差別化ができれば、応募率アップが目指せるでしょう。
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