求人を作成する際、記載しなければならない項目が法律で定められている一方で、記載してはいけないNG表現も存在するため、書き方に注意が必要です。自社に適した人材からの応募を集めるために「どんな人材を求めているのか」を求職者に伝えるのが求人ですが、企業側が好き勝手に書いてよいわけではありません。法律上のルールに沿っていない場合、法令違反となるだけでなく、求職者とのトラブルを招きかねません。
本記事では、求人を作成する前に知っておきたい法的規制やNG表現、使用を避けた方がよいとされる書き方について解説しますので、ぜひ求人の作成にお役立てください。
目次
求人の書き方で押さえておきたい法的規制とは?
求人を書く際に、まずは押さえておきたい法的規制をいくつかご紹介します。
労働基準法
労働基準法とは、労働条件の基準を定めている法律で、1974年に日本国憲法にもとづいて制定されました。正社員やアルバイト、パートなど雇用形態に関係なく労働者を雇用するすべての事業者に適用されます。求人には、ここで規定されている、労働契約や賃金、労働時間や休日および年次有給休暇、賃金などの情報について、正しく明確に記載する必要があります。
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法とは、性別による雇用差別を禁止する法律です。正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」といい、男女それぞれが能力を発揮し、均等な労働条件と待遇を支援することを目的に定められました。この法律により、求人においても、特定の性別だけを募集したり、採用選考時に男女で採点基準を変えるといった行為が禁じられています。
最低賃金法
最低賃金法とは、雇用主が労働者に支払うべき最低賃金を定めた法律のことです。最低賃金にはふたつの種類があります。各都道府県のすべての事業所が労働者に支払う「地域別最低賃金」と、特定の産業に設定される「特定(産業別)最低賃金」です。これらふたつの最低賃金を上回る金額を求人に記載する必要があります。また、最低賃金は定期的に改定されるので、求人を作成する際は、最新の最低賃金を確認したうえで記載するようにしましょう。
なお、最低賃金につきましては、こちらのコラムでより詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
【2024年10月改定】最低賃金はいくらになる? 企業がとるべき対策とは?雇用対策法
雇用対策法とは、雇用に関する国の制度や理念などが示されており、労働者の再就職を促進するために制定された法律で、正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」です。少子高齢化などによって雇用環境が変化していくなかで、労働者の安定した生活を確保すること、労働生産性を向上させることが背景にあります。
また、この法律では以下の行為が原則的に禁止とされています。
- 労働者の募集に際し、年齢制限を設ける行為
- 年齢を理由に応募を断る行為
- 年齢によって職種や待遇を変える行為
例外として年齢制限が認められる場合については、次の章でご紹介します。
参考:厚生労働省|雇用対策法及び地域雇用開発促進法の改正について
職業安定法
職業安定法とは、主に職業の紹介や仕事の供給に関して定めた法律です。たとえば、求人の際に必要な情報を明示したうえで募集することや、職業紹介を事業としている企業は情報提供を厚生労働省にしなければいけないなど、人材サービスを適切に利用するために押さえておくべきルールがあります。また、2022年の法改正により、求人に関する情報の表示や、個人情報の取り扱いに関するルールなどが追加・厳格化されました。
求人の書き方で注意すべき4つのNG表現
求人を作成する際に、注意すべきNG表現を挙げています。適用除外例の職種などもふまえて解説していますので、ご参考にしてください。
NG表現1:性別を限定・差別する表現
男女雇用機会均等法により、求人を募集する際に、性別を理由とする差別は禁止されています。NGとされている表記、OKとされている主な表記は、以下のとおりです。
NG表記 | OK表記 |
---|---|
主婦歓迎 | 主婦(夫)歓迎 |
営業マン | 営業マン(男女)、営業職、営業スタッフ |
看護婦 | 看護師 |
ウェイター、ウェイトレス | ホールスタッフ |
カメラマン | カメラマン(男女)、フォトグラファー |
女性歓迎 | 女性活躍中 ※企業の現状を表す事実なのでOK |
女性秘書 | 秘書 |
募集人数:男性5名、女性3名 | 募集人数:8名 |
筆記試験(試験後に男性のみ追加の試験があります) | 筆記試験 ※試験内容は男女ともに同一の内容を実施する |
男性:月給28万円~ 女性:月給26万円~ ※性別で異なる条件をもうけることは禁止 | 月給28万円~ |
ただし、業務の遂行上、どちらかの性でなければならない職務適用除外職種として認められている求人は例外とされており、性別を限定しても違反にはなりません。
職務適用除外職種の一例 ◆芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要な職務 →女優、男性モデルなど ◆守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要な職務 →現金輸送車の警備員など ◆宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上、その他の業務の性質上、男女のいずれかのみに従事させることが必要な職務 →巫女、女性更衣室の係員、エステティシャン、ホスト、ホステス、レースクイーンなど |
NG表現2:年齢を制限する表現
雇用対策法により、求人を募集する際に、年齢を制限する表現は禁止されています。NGとされている表記、OKとされている主な表記は以下のとおりです。
NG表記 | OK表記 |
---|---|
募集年齢:30歳まで ※年齢の表記は禁止 | 年齢不問 |
若い方歓迎 | 学生歓迎 ※学生の場合、年齢の決まりがないため年齢制限にはならない |
45歳以上の方、適性検査を実施 | 全員適性検査を実施 |
ただし、年齢制限が適応される条件として以下のようなケースがあります。
- 例外事由1号/定年を上限とした募集
- 例外事由2号/労働基準法などで年齢制限がある募集
- 例外事由3号イ/長期キャリア形成を目的とした若手限定募集
- 例外事由3号ロ/技能などの継承を目的とした特定年齢・職種募集
- 例外事由3号ハ/芸術・芸能分野における特定年齢の募集
- 例外事由3号のニ/60歳以上の高齢者
これらの場合、「年齢制限に合理的な理由がある」と認められており、年齢を制限しても違反にはなりません。
なお、年齢制限についてはこちらのコラムでより詳しくご紹介しています。
若い人がほしいときの求人の書き方|年齢制限の注意点を解説 求人募集の年齢制限は原則NG! ダメな理由と例外、効果的な書き方を解説NG表現3:性格や身体的な特徴を指定する表現
特定の人に対する差別的な表現は「差別表現」にあたるため、求人を作成する際にも注意が必要です。具体的には、人種や民族、居住地、性格、身体的特徴などを指定することが禁止されています。NGとされている表記、OKとされている主な表記は以下のとおりです。
NG表記 | OK表記 |
---|---|
外国人歓迎日本国籍の方 ※本人の生まれ持った性質、人種や民族の特定は禁止 | 英語(日本語)で接客ができる方歓迎 ※職務遂行に必要な能力を要件にすることはOK |
特殊部落 | 被差別部落、同和地区 |
出身が〇〇県の方 ※出身地や居住地の特定は禁止 | 〇〇にお住まいの方は通勤便利地元の方も歓迎 |
色盲、色覚異常、ブラインドタッチ | 色覚障害、タッチタイピング |
明るく元気な人 | 笑顔で元気に挨拶ができる人 ※性格ではなく、個人の能力に関することはOK |
NG表現4:実態と異なる条件の表現
求人を作成する際、実態と異なる好条件を記載して求職者を募る行為は禁止されています。採用後のトラブルに発展しかねないほか、求人に虚偽の条件を提示して労働者を募集する行為は、職業安定法65条9号に該当し「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられます。
求人でなるべく避けた方がよい書き方
求人の作成において、求職者に魅力が伝わりづらく、マイナスイメージを与えてしまうケースもあるため、使用を避けた方がよいとされる書き方も存在します。法令違反とはまではされていないものの、意識しておくべき表現やワードについてご紹介します。
抽象的な表現
たとえば、下記のような抽象的な表現を使っている企業は、自社の特長が具体的に思い浮かんでいないのでは……。と、とらえられる可能性があります。
- アットホームな雰囲気
- 個性が活かせる環境
- 若者が中心で風通しがよい職場
以下に改善例を挙げています。さらに一歩踏み込んで「なぜそうなのか」という根拠を記載することで、求職者に自社の魅力が伝わりやすくなります。
改善例)
- 社員同士が気軽に声をかけ合い、困ったことをお互いに助け合う温かい職場
- 社員一人ひとりの能力やアイデアを尊重しプロジェクトや企画へ積極的に取り入れる環境
- 20代のスタッフが多く活躍し、年齢や役職を問わず自由に意見を出し合える職場
精神論的なワード
たとえば、下記のような精神論的なワードは求職者から敬遠されてしまう可能性があります。
- やりがいのある仕事
- やる気重視
- 明るく前向きにに取り組める
これらをアピールしたい場合には、具体的な数字や報酬例などに置き換えることで、イメージが沸きやすくなります。
改善例)
- 売上目標120%達成
- 過去2年間で5名がリーダーポジションに昇進
- 仕事の成果がインセンティブや昇給に反映
これまでにご紹介したNG表現以外にも「給与は最低賃金を下回っていないか」「就業時間は法定労働時間を超えていないか」など、常に最新の情報と照らし合わせながら、求人を作成するように心がけることが大事です。
なお、応募率を高める求人の書き方についてはこちらのコラムでご紹介していますので、あわせてご確認ください。
応募率を高める求人キャッチコピーの書き方! 例文つきでわかりやすく解説 応募したくなる求人の書き方とは? 魅力的な文章や広告をつくる5つのコツまとめ:まずはNG表現を把握したうえで、求める人材へ響く求人を
求人を作成する際は、求める人材へ響く内容になっているかを意識した書き方がおすすめです。とはいえ、本記事でご紹介したように、それぞれの法的規則を守り、NG表記を把握しておくことが大切です。
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