求人の試用期間とは、本採用の前に労働者の適性を見極めるために設定する期間です。求人を出す企業側にとっても、求職者にとっても重要な期間となります。本コラムでは「試用期間を導入したいけれど、具体的な内容や注意点を知らない」「求人への書き方がわからない」という方に向けて、試用期間の条件や求人の書き方について解説します。
試用期間の条件や求人への適切な書き方を知ることで、トラブルを避け、スムーズな採用活動につなげることができます。ぜひ、ご参考にしてください。
目次
試用期間を設ける目的とメリット
試用期間は、企業と求職者の双方にとって、採用のミスマッチを防ぎ、よりよい関係を築くための重要な期間です。試用期間を設けるメリットは、主に以下のような点にあります。
企業側のメリット
企業は試用期間を通じて、入社した従業員が自社の文化や業務内容に適合しているか、必要なスキルや能力を備えているかを総合的に判断できます。
- 適性の見極め
履歴書や面接だけでは把握しきれない、実際の業務における能力や人間性を評価できます。 - ミスマッチの防止
入社後の一定期間を通じて、従業員の適性を確認し企業と本人双方の理解を深めることで、ミスマッチやトラブルを防ぎ定着率の向上を図ります。 - 教育・育成期間
新しい従業員が業務に慣れるための OJT (On-the-Job Training) 期間として活用し、必要な知識やスキルを効果的に習得させることができます。 - パフォーマンスの評価
試用期間中に従業員の業務遂行能力や成果を評価し、正式な雇用に進むかどうかの判断材料とします。
求職者側のメリット
求職者にとっても、試用期間は入社後のギャップを解消し、企業との相性を確認できる貴重な機会となります。
- 企業文化の理解
実際の職場の雰囲気や企業文化を体験し、自身がその環境に馴染めるかを確認します。 - 業務内容の確認
事前の説明と実際の業務内容に相違がないか、自分のスキルや経験が活かせる業務であるかを見極めることができます。 - キャリアプランの再確認
自身のキャリアプランと企業の方向性が合致しているかを確認し、長期的な視点での働き方を検討する機会となります。
試用期間に関する法的な注意点
試用期間は、労働基準法やその他の労働法規においてさまざまな規定があり、企業はこれらを遵守する必要があります。求人の書き方の前に、まずは法的な注意点についてご紹介します。
試用期間中の労働条件の明示
労働契約を交わす際には、試用期間の有無、期間、賃金、労働時間、その他の労働条件を明確に書面で明示することが義務付けられています。とくに試用期間中に条件や待遇が異なる場合はその内容をしっかり明示するように注意しましょう。
解雇権の濫用
試用期間中であっても、企業は従業員を自由に解雇できるわけではありません。試用期間中の解雇が認められるためには、勤務態度に問題がある・経歴詐称・能力不足が著しい場合など、誰が見ても解雇はやむを得ないと思える理由が必要です。とくに試用期間開始から14日を超えた場合は、通常の解雇と同じく、30日前の予告または解雇予告手当の支払いが必要になります。
社会保険・労働保険の適用
試用期間中の従業員も、原則として社会保険(健康保険、厚生年金保険)および労働保険(雇用保険、労災保険)の適用対象となります。たとえ試用期間中であっても、条件を満たせば加入させなければなりません。
労働基準法の適用
試用期間中の従業員も労働基準法の適用を受けます。したがって、最低賃金や労働時間の規定を遵守する必要があります。
差別的取扱いの禁止
試用期間中であることを理由に、正社員と比べて不合理な差別的取扱いをすることは認められません。たとえば、業務に必要な教育訓練を受けさせない、福利厚生の適用から除外するといった行為は問題となる可能性があります。
試用期間終了後の雇用形態の変更
試用期間終了後に雇用形態が変更する際は、原則として労働者の同意が必要です。また、変更後の労働条件(給与、労働時間、仕事内容など)を明確に示し、企業と労働者が署名・捺印するようにしましょう。
試用期間の求人の書き方
求人の書き方について、試用期間の条件の表記や注意点などを解説します。試用期間は、雇用契約において重要な要素であり、求職者にとっても大切な情報となるため、試用期間について求人に記載する際は、以下のポイントをしっかりと押さえておくことが大切です。具体的な条件を明記することで、求職者に対して信頼感を与え、適切な人材を引き寄せることができるでしょう。
試用期間の有無と期間の明記
求人には試用期間があるかどうかを明記する必要があります。試用期間がない場合でも、その旨を記載することが求められます。
【記載例:試用期間ありの場合】
- 試用期間:3か月(この期間中の給与・待遇に変更はありません)
- 試用期間:6か月(期間中は月給の90%を支給。その他待遇は本採用後と同様)
- 試用期間:あり(原則3か月、能力・実績により短縮または延長の可能性あり)
【記載例:試用期間なしの場合】
- 試用期間:なし
- 試用期間:試用期間の定めなし
試用期間中の給与・待遇の表記
試用期間中の給与が本採用後と異なる場合、その金額や条件を明確に記載する必要があります。また、福利厚生や待遇についても、詳細に記載することが重要です。たとえば、交通費支給の有無や、社会保険の適用についても触れておくとよいでしょう。
【記載例:本採用後と同様の場合】
試用期間中の給与
- 月給:25万円~(試用期間中も本採用時と同額)
待遇
- 交通費:別途全額支給
- 社会保険:試用期間中より健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険に加入
- 福利厚生:各種手当、慶弔見舞金、健康診断など(本採用後と同様の待遇)
【記載例:本採用後と異なる場合】
試用期間中の給与
- 月給: 25万円(試用期間中は基本給の90%支給)
- 試用期間終了後、業績評価に基づき昇給の可能性あり
待遇
- 賞与: 年2回(試用期間中は支給なし)
- 昇給: 年1回(試用期間終了後から適用)
- 交通費支給: 上限月2万円(試用期間終了後は全額支給)
- 社会保険完備
- 残業手当: 実働分全額支給
- 福利厚生: 社員旅行、健康診断、資格取得支援制度あり
試用期間を設ける際のトラブルを避けるために
試用期間を設ける際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを理解することで、企業と従業員の双方にとって円滑な関係を築くことができます。
雇用契約書との整合性を確保する
試用期間については、就業規則や雇用契約書に明確に記載し、従業員に説明することが重要です。これにより、双方の理解を深めることができます。また、試用期間の長さは一般的に1〜6か月が多く、最長でも1年程度が一般的です。
試用期間中の給与や福利厚生についても、事前に明確にしておくことが大切です。給与については最低賃金を下回ることがないように注意しましょう。
従業員とコミュニケーションをとる
試用期間中も、通常の従業員と同様に扱うことで、従業員のモチベーションを維持し、適性を見極める環境を整えることができます。また、試用期間中にパフォーマンスが不十分な場合は、適切なフィードバックを行い、改善の機会を与えることが大切です。
試用期間満了時の対応について求人に記載する
試用期間を設ける目的や正社員登用へのプロセスを求人の時点で明確にしておくとよいでしょう。これにより、試用期間終了後のトラブルを避けることができます。
【記載例】
試用期間の目的
- 業務適性の確認
- 職場環境への適応状況の評価
試用期間終了後の評価
- 試用期間中の業務パフォーマンスを上司や人事部門が評価します。試用期間終了時に面談を実施し、正式採用の可否を決定します。
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まとめ:試用期間は終了後のプロセスも含めて求人へ記載する
試用期間を求人に書く際は、試用期間の有無、具体的な期間、給与、待遇などを明確に記載することが重要です。これにより、求職者は自分に合った職場かどうかを判断しやすくなります。また、トラブルを避けるためにも、試用期間終了後はどのようなプロセスで正式採用となるのかも求人に記載しておくとよいでしょう。
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