近年、履歴書不要の採用活動が増加しています。これまで採用活動においては当たり前に履歴書の提出を求めていましたが、履歴書の提出は応募者・採用担当者双方に大きな負担が発生します。とくに中小企業においては、履歴書の提出に伴う応募率の低迷や採用コストの増大が課題となっていることから、履歴書の提出を不要にするという選択肢が注目されています。
目次
履歴書不要の採用選考はOK
日本の採用選考において、履歴書を活用しなければいけないという法的な義務はありません。そのため、履歴書不要の選考を実施しても法的な問題はありません。しかし、応募者の基本情報を把握しやすくなることや、書類の内容に法的な責任が伴うことから、多くの企業で履歴書の提出が求められています。
履歴書の法的な位置づけ
応募者が履歴書を提出することは法的な義務ではなく、あくまでも企業が選考の一環として応募者に求めるものです。しかし、履歴書には署名や押印をすることも多く、電子ファイルであっても法的な効力を持ちます。企業は応募者が入社した際に履歴書を正式な人事データとして取り扱うことが可能であり、記載内容が事実と異なる場合は経歴詐称として法的責任を問うことができます。
企業が履歴書の提出を求める理由
応募者の履歴書が手元にあると、選考時には応募者の基本情報を把握しやすく、入社時には正式な人事データとして手続きをスムーズに進められます。また、応募者の身元確認のための書類として活用できるため、多くの企業で提出が求められています。
履歴書は、応募者の住所、氏名、年齢、連絡先、学歴、職歴、資格等を見開き1ページでまとめたもので、応募者の把握や面接官同士の情報共有が容易になります。また、履歴書を提出してもらうことで、選考案内をする際の連絡先もわかります。
採用決定後は履歴書を正式な人事データとして扱えるため、履歴書の情報を元に従業員名簿を作成できます。従業員名簿とは、全従業員の氏名、生年月日、住所などの基本情報や、従事する業務の種類、雇入と退職の年月日などの情報をまとめたもので、労働基準法で作成が定められています。
選考フローを簡略化する流れ
近年の採用活動では、優秀人材の獲得や採用業務の効率化のため、選考フローを簡略化する流れがあります。選考フローを簡略化するひとつの方法として、書類選考を省略するために履歴書不要の採用選考が検討されています。
選考期間を短縮し、早期の人材獲得につながるため
選考期間を短縮すると、欲しい人材に早く内定を出して入社を促すことができます。優秀な人材は複数の企業から内定を受けるため、「先に内定をいただいた企業への入社を決めた」という辞退理由も多くあります。とくに中小企業では、大企業からの内定が出る前に候補者に内定を伝えて人材を確保する必要があります。こうしたなか、履歴書不要の選考は応募後すぐに面接選考を実施できるため、選考期間の短縮につながります。
採用業務の効率化のため
近年は採用手法が多様化し、採用担当者の業務は年々増えるなか、採用業務の効率化は大きなテーマのひとつです。採用担当者は、従来の求人広告への出稿や面接調整だけでなく、SNS運用、ダイレクトスカウトの送信、リファラル採用の制度設計と周知など、多くの業務を抱えています。とくに中小企業では専任の採用担当者がおらず、経営者や部門責任者などが他業務と兼務しながら採用活動をしているケースも少なくありません。そのため、少ない工数で最大限の効果を出すための業務効率化が求められています。そのひとつの対応策として、履歴書不要の選考が注目されています。
履歴書不要にするメリット
履歴書不要の選考は、応募者を増やし採用工数を削減できます。応募者にとっては履歴書作成の手間を省くことができ、採用担当者にとっては書類選考やその後の書類管理の負担を減らすことができるからです。さらに、書類選考を無くすことで選考スピードを早め、よい人材は早期に内定を出して入社を促すことができます。これらのメリットについて、ひとつずつ解説していきます。
応募者を増やせる
履歴書不要の選考は、多くの応募を集めることができます。履歴書の作成には時間と手間がかかるため、転職したくても忙しくて準備ができない人や、履歴書の提出に抵抗を感じる若年層に対して履歴書不要の選考は魅力的に映ります。応募者の数が増えると、企業は採用を決める人材の選択肢を増やすことができ、また大量募集の際も速やかに採用枠を満たすことができます。
選考スピードを早められる
履歴書の提出を求めない選考は、求人閲覧から応募、応募から面接までの時間を短くすることができます。一般的に、応募者が書類を作成して提出し、採用担当者が書類選考を行い、結果を連絡するまでには1週間から2週間程度が必要です。
しかし、履歴書を不要にすることで、応募者は履歴書作成の時間が不要となり、求人に興味を持ったらすぐに応募することができます。企業もすぐに面接で応募者と直接会話ができるため、よい人材であれば、早い段階で自社の魅力を伝えて応募者の意欲を高めることができます。
採用業務の工数削減につながる
履歴書不要の選考は、採用担当者の業務負担を大幅に軽減できます。履歴書は個人情報にあたるため、厳正な管理が必要です。履歴書の提出時には個人情報の取り扱いについての同意を取得する必要があります。また提出された書類は労働基準法に基づき3年間の保管義務があります。不採用の際は応募者への書類返却が求められ、返却できない場合は企業が責任を持って廃棄することが義務づけられています。このように、応募者に履歴書の提出を求めると、提出時から保管、廃棄までさまざまな業務が発生します。しかし、履歴書の提出を不要にすればこうした業務が不要になり、採用担当者にとって大幅な工数削減になります。
履歴書不要にするデメリット
履歴書を不要にすると、マッチ度の低い応募者の増加、面接官の負担増大、採用におけるトラブル時のリスク上昇といったデメリットがあります。それぞれについて、ひとつずつ解説します。
志望度が高くない人材からの応募がある
履歴書不要の選考は、気軽に応募しやすいために多くの応募者を集められる反面、意欲が低い人材やマッチしない人材からの応募も増えてしまいます。履歴書によくある「志望動機」などを伝える必要がないため、その企業に興味がない人でも、とりあえず応募できてしまうからです。結果として、面接で応募要件を満たしていない、意欲が低いといったミスマッチが多くなりがちです。また、意欲の低さから面接の無断キャンセルや音信不通になることもあります。
面接の重要性が高まる
履歴書の提出を求めない場合、面接だけで応募者の経験・スキル、人柄、連絡先などを網羅的に把握する必要があります。応募者に関する事前情報が少ないため、面接官には、その場で必要な情報を集める柔軟性が必要です。聞き漏らしによる追加質問や無意味に感じる質問が多いと、応募者は企業に不信感を抱きます。無駄なく必要な情報を集め、スムーズな選考ができるかどうかは面接官にかかっており、面接官の負担は大きくなります。
経歴詐称などが発覚しても解雇ができない
履歴書の内容には法的な責任が発生するため、採用後に経歴詐称が発覚した場合には法的な責任を問うことが可能です。しかし、履歴書の提出無しに採用を決めた場合、採用後に経歴詐称が発覚しても証拠が無いため、解雇や懲戒といった対応が不当解雇、不当処分とみなされるリスクがあります。
履歴書不要にするときの注意点
最後に、履歴書不要の選考におけるデメリットを補うための注意点について解説します。具体的には、独自のフォーマットや既存の登録情報の活用や、選考途中での履歴書の提出依頼、面接内容の標準化、履歴書不要にする選考の限定、という4つが挙げられます。それぞれについて解説します。
自社や求人サイトのフォーマットを使用する
応募者の基本情報は、自社の応募フォームや求人サイトなどの登録情報を活用することで、事前に把握することができます。求人サイトやIndeedなどのサービス、採用管理ツールを活用すれば、基本情報の収集と選考の進捗管理を一元化できます。自社の応募フォームを使う場合は、選考に用いる情報を絞って項目を選定し応募時や面接の際に記入を求めます。書類管理の手間を省くためには、WEB上のフォームの活用が有効です。
なお、独自のフォーマットを作成する場合は、入力項目を厳選します。入力項目が多いと、履歴書作成に匹敵する労力が必要になり、応募者が集まりにくくなるからです。また、適性や能力に関係のない就職差別につながる恐れがある項目を含めないよう注意しましょう。就職差別につながる恐れのある質問とは、本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項です。具体例は以下の通りです。
- 本籍・出生地に関すること
- 家族の職業、病歴、学歴、収入、資産など
- 住宅状況や生活環境、家庭環境などに関すること
- 宗教や支持政党に関すること
- 人生観、生活信条などに関すること
- 尊敬する人物
- 思想に関すること
- 労働組合や社会運動の活動歴など
- 購読新聞・雑誌・愛読書など
選考途中に履歴書の提出を求める
応募時は履歴書を不要にして、選考が進んでから正式書類として履歴書の提出を求める方法があります。一般的には最終面接の前後など、マッチ度が高く採用の可能性がある候補者に絞って履歴書の提出を求めます。この方法なら、履歴書不要のメリットである応募時のハードルを下げ、採用業務の効率化を達成しながら、法的な効力のある正式な人事データを集め、入社前後のトラブルを回避するという履歴書提出のメリットも得ることができます。
面接マニュアルや面接時の質問表を作成する
履歴書を不要にすると面接での確認事項が増えるため、面接段階ごとに面接の流れや質問リストを作っておきましょう。面接の流れを標準化することで、候補者への聞き漏らしを防げるほか、応募者間の情報量が統一され応募者同士を比較検討しやすくなります。
面接マニュアルでは、面接官としての注意点、面接の流れ、質問内容、評価基準、応募者への伝達事項をまとめ、面接官の中で評価軸ややるべきことを統一します。面接官は会社の顔となるため、礼儀正しさや清潔感といった振る舞いにも配慮が必要です。また、確認事項や伝達事項に抜け漏れがないよう、質問内容も細かく決めておきます。
とくに履歴書不要の選考では、面接で経歴やスキルを網羅的に確認する必要があり、質問内容が多くなりやすいため、丁寧にリスト化しておきましょう。なお、ここでも就職差別につながる恐れのある質問をしないよう注意しましょう。
履歴書不要にする採用手法や募集職種を限定する
履歴書不要の選考は、人物重視の採用や大量募集に向いており、経験やスキルを重視する採用にはあまり向いていません。採用したい人物像や人数に合わせて履歴書の提出を求めるかどうかを判断しましょう。
履歴書不要の採用選考が向いている職種の例としては、工場の製造職や店舗のオープニングスタッフ、イベントスタッフなどの大量募集です。こうした職種は資格や経験よりも業務姿勢や接客適性といった人物面を重視することが多く、履歴書不要にした方が早期に多くの応募を得られて採用業務の効率化が進みます。また正社員でもリファラル採用(社員紹介)であれば、応募時の履歴書提出は不要としているケースもあります。
一方で、正社員の資格職や経験・スキルを重視する採用を行う場合は、履歴書や職務経歴書を提出してもらい、スキルがマッチする人を選抜してから面接を行う方がよいでしょう。
まとめ:履歴書不要の採用選考を活用して採用効率を高めよう!
本記事では履歴書不要の選考について、法的な合理性とメリット・デメリット、注意点について解説しました。
履歴書を不要にすると、早く多くの応募者を集められる一方、面接の比重が重くなり個人情報が手元にないことによる法的リスクもあります。こうした問題には、選考途中で履歴書の提出を求めたり、面接方法を標準化することで解決できます。
履歴書不要の採用選考は、メリットもデメリットも多くありますが、デメリットに対しては対策を打つことができます。採用担当者が忙しく、応募者が集まりにくい中小企業こそ、職種や応募経路を踏まえて履歴書不要の採用選考を適切に活用していきましょう。
履歴書不要の採用活動では、採用管理システム(ATS)の導入、活用が有効です。履歴書の提出を求めなくても独自の応募フォームを作成したり、Indeedなどの転職サービスと連携させて登録情報を活用したりできます。複数の求人サイトと連携できるため、募集の間口を広げられるほか、応募者情報と選考状況を一元管理することができ、採用業務の効率化も達成できます。
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